「カナダの森より」
日時をもう失った気がする、たった一人で
鎮守の、数百のエーカー、菌糸の張り巡らされた森で幸福を探している
許されますか
許されるさ
ふかふかの小道を子供二人が歩いていく
追いつけそうもないけれど
少女と並ぶボクの声が聞こえ始める
常闇もいずれまたお便りします。霧が立ち込めても怪物はでない。高鳴る希望を持っているのにそんなボクは死ぬはずがないから。
この世の砦の森、愛とかが溜め込まれて、ある日解き放とうと待っている。悠久の時なんて経つわけないよ。君が笑顔になるまでだから。
まったく、キザったらしい。
許されますか
許されるさ
カナダの故郷、この森で泣きじゃくったあの日はまだカケスが守ってる
マリアの涙もないのに、昔傷を舐めてくれたキツネが撃たれる世の中なんてきっと間違っていることだけは分かるから。
失ったものはまだ名を彫ったうろに引っかかっているのなら、どうして涙を流してしまうんだろう。小道に流れていた音楽がもう消えてしまったからだというのなら覚えている限り歌おうと君は言うだろう。
そろそろ落ち葉に散々肌を透かした太陽が差す。
許されますか
許されるさ
すくえなかったモノクロの思い出。白状する。
「君があしをくじいたばしょをわすれてしまった。君をみつけたいっしゅうかんご、ボクはくずれおちた。君は1インチもかわらないところにねていた。すこしはあるけたはずだったのに。」
許さないでください
許さないでください
森と土に世界は無視を決め込んでいる。
君の分も生きるなんてそんな無責任ではいられないから
君ならどう生きるかそれだけを考えてきたんだ。全ての人の笑顔に君の影がちらついた。
愛されるたびに胸が平坦に押し潰された。
許されますか
許されるさ
間違った試しなんかないのに、焼けるようにそばかすを覚えている。大切なのはもっと、消えてないことにも気付かない、そういうものなんだ。
難しい言葉はいらないし、簡単な言葉じゃ薄っぺらい。「香りを届けてあげましょう」野に芳しくある為だけに咲いた花を二三摘み取って、前掛けに忍ばせていた。
許されますか
許されるさ
青さもブルーに見ちゃいけない。心の動きなんかしのいでいくくらい澄んだ青。
暗さを悪にしちゃいけない。人を正しく恐怖させて病ませない宵闇。
どうしてこの国の子供はすぐ血を見たがるの。思い出をかき集めたってこの世にいたのは生きることしか知らない人だけだった。今も必ずそう。
許されるよ
森の中には妖精しかいないわけじゃない。でも悪魔はまだあなたの前に現れていない。
その意味を考えながら歩いてゆきなさい
落日の落ち葉の優しい香りが指先の内までゆきわたる。霧も何もないのに目が潤んだ。まだきちんと、息をしていなかったみたいだ。香りが弾けて消え去ったおにごっこの鬼がまだこの森に住まうような湿気がする。
ああ、考えるまもなく青い目はすぐ隣にあった。背、伸びたんだね
走り出せはしないくらいに不幸せで、問題外の疲れもあった。そうして他の地でも忘れられないものは増えたんだと語って聞かせる。たぶん多くは君のものでもあったのだから。純粋でいなくとも不純でなければいい社会の歯車。これは結構いい意味の言葉だよ。
手持ち無沙汰に照れて歌を唄った。デュエットはあまりにあまりに。涙は流れてしまった
「ごめん、自己完結でさ」
やはり世界は熱を許してふつふつ生きなおしはじめている
君と二人で少し色づいたセピアの思い出を小道の切り株に置いた
取りに帰ってこれますように
夜も明けて、何かが飛び立つ。
都会に向かって歩き出した。冷たくはないから。